近年、「ADHD」(注意欠如・多動症)という言葉をメディアで目にする機会が増えてきました。しかし、子どもの発達障害としては広く知られている一方で、大人のADHDの認知度は未だ低いといえるでしょう。
国内では、ADHDと新たに診断される人の数が、子どもも大人も年々増加しています。
落ち着きがなく気が散りやすい、忘れ物が多い、などのイメージを持たれることが多いADHDですが、彼らの中には、五感で感じる刺激に対して非常に敏感な人がいます。特に、「音」に対する過敏性が高いと、会話や交通騒音、食事の音などの日常的な音が、集中力を妨げるだけでなく、大きなストレスや圧倒感を引き起こしてしまうことがあります。
ADHDは、感受性の高さやこだわりの強さ・独創性が仕事や人間関係で強みにもなり得る一方で、ADHDの特性や適切な付き合い方をしっかり知らないと、本人、あるいは周りの人の心身の健康にネガティブな影響を及ぼしてしまう可能性があります。
ここでは、ADHDの特徴やチェックリスト、対処方法、また、特に「音」に過敏なADHDの方向けにお勧めしたい耳栓またはイヤープラグについて、詳しく紹介していきます。
一緒にADHDについて理解を深め、自分や大切な人の生活の質を向上させるためのヒントを学びましょう。
ADHDとは?
ADHDは「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略で、注意欠如・多動症、あるいは注意欠陥・多動性障害と呼ばれる発達障害の一種です。主に、注意の欠如、過剰な活動性、衝動性の3つの症状が見受けられます。
ADHDと聞くと、多くの人が子どもの発達障害をイメージされますが、実は子どもの頃は症状が目立たずに見過ごされ、大人になってからADHDと診断されるケースも多くあります。
ADHDの原因
ADHDの原因は現時点ではっきりと解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因の両方が影響していると考えられています。
脳の画像診断を使った研究では、ADHDでない人と比べて、脳の構造や機能に偏りがあることもわかってきており、特に、集中力の維持や行動計画に係る脳の部位(前頭前野)や、スムーズな行動を行うための部位(尾状核)の働きが弱いことが知られています。
では、ADHDの方は具体的にどのような特徴を持っているのでしょう?
ADHDの特徴タイプ
ADHDは、症状に応じた3つのタイプに分けられます:
1. 不注意優勢型
「うっかり」間違いが多いタイプ。細かい作業が苦手でミスが多い、指示やタスクを忘れがち、物を失くしがち、集中力が続かない、整理整頓が難しい、など。
2. 多動・衝動優位型
落ち着いてひとつの物事に取り組むのが苦手で、ひとつの場所でじっとしていられないタイプ。目的なしに衝動的に行動を取ったり、落ち着いているように見える状況でも、内部的には不安定なエネルギーを感じることがあります。また、気持ちのコントロールが効きにくい場合があり、他人との関わりでトラブルが起こりがちな人もこのタイプに含まれます。
3. 混合型
「不注意」と「多動 / 衝動」の両方の特徴を持つタイプ。
ADHDの治療
現在、ADHDの対処法としては、薬と行動改善の2つのアプローチがあります。
国内では、ADHD向けの治療薬として4種類の処方薬が認められており、主に、「集中力や注意力を高め」、「衝動性や多動性を軽減する」作用があるとされています。これらの薬は、ADHDの方の脳に不足しているといわれている、ドーパミンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質の働きを強めたり、シグナル伝達を改善することで、一時的にADHDの症状を改善します。
もう一つの治療法である行動改善は、専門家やカウンセラーとの協力のもと、ADHDの症状に対処するための具体的な戦略やスキルを身につけることを目的とします。例えば、時間やタスクの管理、ストレス管理やリラクゼーション法、衝動的な行動の制御などのスキルを学びます。
ADHDチェックリスト
ここまでの内容を読んで、「もしかしたら自分はADHDかも?」と思った方もいるかもしれません。
ADHDの診断は、問診や行動観察、心理検査などを通して行われます。
日常生活で困っている場合は、医療機関を受診することをお勧めしますが、以下から、実際に発達障害の診断で用いられるDSM-5という診断基準の項目を、あらかじめ確認することができます。
不注意傾向:
以下の項目に5つ(17歳以上の場合)、あるいは6つ(17歳以下の場合)以上あてはまる状態が6か月以上継続している。
- 細かい注意を払うことができず、ケアレスミスが多い □
- 注意を持続しつづけることが難しい □
- 話しかけられても聞いていないように見える □
- 学業・家事・仕事などで、指示されたことをやり遂げることができない □
- 順序立ててタスクや課題を進めることが難しい □
- 継続して課題に取り組むことが難しい/嫌い □
- よく必要な物をなくす □
- よく関係ないことで気が散る □
- 忘れる・抜け漏れることがよくある □
多動性・衝動性傾向:
以下の項目に5つ(17歳以上の場合)、あるいは6つ(17歳以下の場合)以上あてはまる状態が6か月以上継続している。
- そわそわと手足を動かしたり、座っていても、もじもじ動いてしまう □
- 着席しつづけるのが難しく離席してしまう □
- じっとしていられないような気分になる □
- 静かに遊びや余暇活動に取り組むことが難しい □
- 勢いよく行動し続ける、じっとしていると落ち着かない □
- しゃべり過ぎることが多い □
- 相手の質問が終わる前に話し始めてしまう □
- 相手の話が終わるまで待つことが難しい □
- 他の人の活動(例:会話、ゲーム)を遮って邪魔をしてしまう □
※これらの項目のいくつかは12歳以下で存在していること、社会生活の中でこれらの状態が複数の場面(家、学校や職場、親族や友人といる場、その他)でみられることも診断の基準になります。
参照:DSM-5 = 「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」アメリカ精神医学会作成
ADHDの方と音の関係
ADHDと感覚過敏性
これまでの内容で、ADHDには不注意ADHDと多動症ADHD・衝動性型があることがわかりましたが、両方に共通するもう一つの特性として、「感覚過敏性」があります。
ADHDの方の多くは感覚過敏性も持っていて、音は特にトリガーとなる場合があります。特定の音に過剰に反応したり、たいていの人が気に留めない音も、感覚過敏の人にとっては耐えられないほど大きく聞こえたり響いたりし、苦痛や不快感を感じさせます。また、自分が発している声や音が騒音になることもあります。
ADHDと聴覚過敏の関係
ADHDと聴覚過敏の関係性については、はっきりした原因は分かっていないものの、脳機能や耳の機能の不全、ストレス、自律神経の乱れなど、さまざまなことが要因となるようです。
聴覚過敏は、日常生活のなんでもないタスクを困難にしてしまいます。音が気になることで勉強や仕事に集中できなくなったり、トリガーとなる音を避けるために孤立してしまい、人間関係さえ困難にしてしまうのです。
こうした悩みを抱えているADHDの方には、ADHD用の耳栓やイヤープラグが役立ちます。
音に敏感なADHDの方におすすめの耳栓(イヤープラグ)
聴覚過敏を持つADHDの方にお勧めしたいのが、Loopの耳栓(イヤープラグ)です。
Loopは、聴覚が敏感な人に最適な耳栓です。些細な物音によって神経が刺激されて疲れてしまう時、仕事・勉強や睡眠のために騒音を減らし、静かで落ち着いた空間を作りたい時、イベントでの大きな音から自分の耳を守りたい時に最適です。
不要なノイズを低減する遮音性を持ちつつも、会話には支障のない設計となっているので、いちいち外す必要はありません。また、目立たないデザインと快適な装着感を持つLoopは、日常での使用に向いています。
音に関する悩みはとてもつらいですが、こうしたアイテムを活用して、普段の仕事・学校生活や日常生活を少しでも生きやすくしてみてはいかがでしょうか?ADHDの子ども・大人両方が安心して日々を過ごすための一助となることでしょう。